イナゴとり行事「イナゴンピック」をフォークロリズムの観点から考える。収入だけが目的ではない地域振興。
おはようございます。
最近、山間地における地域振興について考える機会がありました。
地域振興とは何だろうか。
単に収入を上げることだけが主目的でいいのか。
地元の人に喜ばれるにはイベントに何の要素が必要なのか。
その回答の糸口となりうると私が考えるのが、最近参加した群馬県吾妻郡中之条町にあるイナゴとり&ジャンプ大会のイベントです(^^)。
群馬県吾妻郡中之条町にある寺社原集落は沢渡温泉の近くにあります。
町の中心部に続く道路は深い谷底の川をはさんでいるために、大きな橋ができる前は吊り橋しかなく、人や物の往来がとても困難でした。
しかし、この困難さ故に集落の住民同士の結束力は固く、近くの集落からも「あそこはまとまりがよい」と評判だったようです。
当時は集落内での祭りも行われていました。
しかし、時代が経ち、住民同士の結束力が徐々に無くなっていったようでした。
集落内での祭りも廃れていきました。
さらに谷底の川の上に橋ができると人や物の往来が頻繁になり、人びとの生活の利便性が上がるとともに、住民同士の意思疎通が弱くなっていきました。
そうした中で、役場の方からイナゴとり大会の開催に寺社原集落の田んぼを貸して貰えないかと話があり、2008年から「イナゴンピック」と呼ばれるイナゴとり競争とジャンプ大会が始まりました。
イナゴンピックは今年で第8回になりますが、毎年県内外から約50人~100人近くの人が参加しており、集落内での大イベントになっています(^^)。
イナゴンピックは「なかのじょう山里テーマパーク部会」が主催する地元のボランティアさんたちが中心となって行われる地域振興イベントで経済的な効果は発展途上ですが、賞品は地元の特産品を使い、必要な資材は役場やボランティアの人たちの持ち寄りにするなどコストのかからない工夫がなされています(^^)。
また、経済的効果の他に開催者同士のコミュニケーションや子どもの自然教育といった要素も大事にされています。
このイナゴンピックが導入されたことにより、住民同士の意思疎通の面で効果的であったとの声もあります。
昔は生業の一側面として、主に山間部の蛋白源として語られることの多かったイナゴとりが、衰退した地域の祭りの代替機能として復活し住民同士の意思疎通や子どもたちの自然教育に利用されるという形。
民俗事象が本来の意味と機能においてではなく、新しい状況の中で新しい意味を帯び、新しい機能を果たしていることを民俗学ではフォークロリズムと呼びます(河野眞 2006.民俗学にとって観光とは何かーフォークロリズムの概念の射程を探るー.文明21 16.77-91.)。
フォークロリズムはイナゴとりの他にも非常に多様な形で現代社会に散在しています。
ただ単に経済的効果を上げるのではなく、地域社会の問題や子どもの教育にうまくリンクさせて住民のニーズに応えていくこともまた地域振興なんだなと思いました(*^^*)。
衰退しかかっているイナゴとりがこうした新しい形で生まれていくのは個人的には嬉しいですね(o^^o)。
イナゴンピックは今後も続いていくようです。